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hobby, city walk, life

よるのしゅぞく

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僕には一冊の大好きな同人誌がある。

ちょっとしたことがきっかけで、数年ぶりに大好きな「よふかし」がテーマの短い同人誌を読み返した。 合計で20Pに満たない程度の量で上下に分かれた漫画を軸に、4Pの短編小説と2Pのイラストが挟まったコピー誌。全ては夜のお散歩を軸に、主人公が自身の心と向き合っていくもの。いつだったか、コミティアで買った本。今でもコミティアは通ってるけど、あの頃がなんだか一番楽しかったかな。何買うにしても勢いだったし。この本に関していえば作者買いだったけど。何事もやり始めが一番楽しい。まぁそれはさておき、特にこの本について長く話すつもりはあまりない。話したところで入手できないしネットで検索してもでてこない。

さて話は変わって、この同人誌はバシっと明言はされてるわけではないけど、恩田陸の小説「夜のピクニック」を題材にしている。漫画の方も小説の方もさらっと名前が出てくる。「夜のピクニック」は24時間かけて80kmを歩く学校行事にて、いつもとは違う「夜」という空間を共有し触れ合うことで、いままでとある理由から距離を置いていた男女2人の主人公が心を開いていく物語。前半から中盤までは女主人公と男主人公の2人がそれぞれ夜の街を歩きながら各々の心を自身のなかで整理し、本作の主題となる問題を提示しつつ、気の置けない友人らとの人間関係図を展開していくことで話は進んでいく。後半においても、一向に距離の縮まることのない主人公ら。長くの間距離を置いていた2人の距離はそう簡単には縮まらない。だがそんなところに、転校してしまい、遠くに行ってしまった女主人公の友人の思いやりが時を超え花咲き、主人公らに届き、クライマックスへと進んでいく。熱い。

てかこれって映画化もされてたんですよね。フェイバリット同人で露骨にプッシュされてたうえに映画化までしてた本を今の今まで読んでこなかったってなんかもう目まいがするくらい当時の自分はなんだったんだって感じなんですけど、でも読みました。やっと読みました。読んだぞ、当時の俺。 何が凄いって夜に友人らとダベる描写が本当に頭の中で絵になって出てくるんですよ。 ほんとあ~あ~あ~って口開けてよだれ垂らしながら読んでました。

夜のピクニック」を読んでいて改めて思ったというか一番刺さったのは、友人らの存在なんですよね。自分には散歩だのなんだの、見たい地形、建造物、街並み。やりたいことはいっぱいあって。好きなときに歩いて好きなときに立ち止まりたくなるんだけど、制約が多くても友人と一緒に散歩してる時の方が思い返したとき、楽しかったなって思える。特に夜という空間においては。なんだか本当に大切なことを思い返させてくれた作品だなと思いました。多分普通に有名で、俺が知らなかっただけなんだと思うけど、本当に面白くてオススメの作品です。総括としては、世界で一番楽しい時間は友人と散歩とか旅行するときにグループからはぐれて単独行動するときってことです。あれは本当に楽しい。

 先に述べた同人誌の作者はあとがきにて、友人と東京タワーまで歩いた想いでを書き綴ったあとに、目的(ここでは東京タワー)なんてものは理由付けでしかなく、友人との夜の時間が楽しかったのだと述べていた。本当に同意でしかなくて。なんだか年甲斐もなく、夜を満喫したくなってしまったのでした。

 

夜のピクニック(新潮文庫)

夜のピクニック(新潮文庫)